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たろっと三国屋さんで、懐かしの味に再会した話
美杉のライティング講座に出る
「クリエイティブワークショップ美杉 InakaTourism!」とOTONAMIEのコラボ企画で、津市美杉町の美杉リゾートに来た。この企画は二日間で、一日目はライターさんとクリエイターさん達による座学の講座を受講した。
二日目は、それぞれ、太郎生地区内を回って取材して記事を書いてみようという企画だった。
ライティングの座学で学んだのは、一回三重を飛び出した人やなんらかの理由でが、もう一度三重に戻ってきて、三重にあるもの、すでにあることに対して「これは何だろう」とか「そこに住む人が何を考えているのだろう」と興味を持ち、「既存のメディアが伝えきれない情報を伝えていこう」という思いを感じた。
また、一度三重を飛び出している人にすれば、その地域にあって、「当たり前」で見過ごされていることを再発見し、スポットライトを当てる。それを正確な記事内容にして、友だちに話すように話していくことだった。
太郎生は、名張の裏側。未知なる自然に触れ合える場所
美杉は、8つの地域が集まり出来た。そして、美杉はすごく広くて、中でも太郎生は、名張まで車で20分くらい。
個人的に「太郎生」の名前は知っていたけれど、行ったのは、一回だけだ。アサギマダラを呼ぶ「太郎生里夢(たろうどりーむ)の会が主催の「木工体験」に行く。でも、その時は車で連れて行ってもらう。後で、調べたら「名張から車で20分」で、自力で行けないやんと気づいた。
三国屋さんへの取材で分かったこと
地域の人には当たり前のことが、全然当たり前じゃないこと。
太郎生地域作り協議会の会長さんに話を聞いた。協議会の人数は、42~3名。実質、動いているのは10人程度で、メインが女性たちが核になり、動いている。
「たろっと 三国屋」は、旅籠として、太郎生村が出来た明治22年から存在している。今は、元の持ち主から譲り受け、協議会で旅館を運営している。特にコロナになる前は、旅館で落語の寄席をしたり、田んぼや畑など地域の農業や野菜作りの体験の受け入れ場所だった。旅館の内装デザインは昔ながらのものを活用し、天井は貼り変えた。津市の援助を受けて、地域の活動にも協力している。コロナ禍になり、宿泊客の方はお断りをし、昼は土日だけ、予約制で食事処を運営している。
冬はないが、夏は山歩きや、鮎、アマゴ釣りなどに来る人もいる。料理は女性たちが作っている。コロナ禍で無理になっているが、表や店内にお雛様を飾ったりなどして、人の目を楽しませている。お土産は、土地で売られているものを持ってきている。マコモダケ、地元のお米で「湧水米」、干しシイタケなどを栽培し、売っている。協議会の役割としては、周囲の景観整備や、観光案内も頼めばやってくれるそうだ。
会長さんにはわからないことを、奥の方で調理をしていた女性の方に話を聞いた。お弁当が、めちゃくちゃ美味しかった。カリッとした、天ぷらは、揚げすぎず、衣をつけすぎず、薄く衣越しに中身が見えている。あのさっぱりした天ぷらは、どうやって揚げるのだろう。取材日は、全員が三国屋さんでお弁当を食べた。お弁当の中身は地元の湧水米(ゆうすいまい)、天ぷらには「フキノトウ、雪の下、原木椎茸、菜花のおひたし」が使われており、鮭、フキノトウの味噌和え、高野豆腐、煮こごりだった。後で電話で話を聞いて、引退された調理員の方が、食事を作られていた。びっくりした。昔むかし小学校に通っていた時、調理員さんの作る給食のご飯が、私は大好きだった。とにかく、美味しかった。その日のお弁当の献立は、その日、その日に考える。材料は、貰い物や、その辺の山や畑、田んぼから取ってきたものらしい。
働いている人の話だと、地域の人も食べに来るらしい。地域の人は、「その辺にあるもので、お金を取られるのは…」とネガティブな意見を持つ人もいるらしいので、ご飯に珍しいものをおまけしている、と聞いた。
まとめ
今回の取材で、私は三国屋さんを取材した。地域で働く人の背景って話を聞かないとわからないこともあると強く感じた。また、取材を通じて、「中に居ると違和感がないことが外に居ると珍しく喜ばれること」に気づいた。
しかし、取材後にいくつかの疑問が残った。なぜ「たろっと(太郎生人) 三国屋」なのだろう。また、旅館に泊まる人はどのような人々だったのだろう。そして、なぜ調理員さんばかりなのだろう。「たろっと 三国屋」という存在は、太郎生の人には、どんな場所なんだろう?地域づくりだから、外部の人に向けた存在なのだろうか。また、地域的に外に向かって、人の心がすごく開かれているように感じた。それはなぜなんだろうか。
私の両親は二人ともに農家出身である。母方の方は、山を所有する。実家も母の実家も田んぼや畑で採れた「作物」や「山で採れたもの」を食べるので、私にはごくごく自然な環境にあった。そのせいか、私自身は「たろっと 三国屋」さんで聞いた話の通り「地域の人」の感覚に近いと感じた。一方で、地域外から来た人には珍しいし、ずいぶんと新鮮な体験なのだろうなと思った。
三国屋さんの雰囲気は、おとな食堂じゃないだろうか。例えば、隣の家の人と特別なおしゃべりをしたくなったら来る場所なのだろうと感じた。私の見た感じでは、顔見知り同士がおしゃべりしててもおかしくない、落ち着いた空間だった。行きつけの食堂というべきだろうか。食堂で働く人が給食を作ってくれていた人なら、私は懐かしいと感じる。小学校を出てから、他の人はわからないが、給食を食べることがなかった。給食は大人になると食べなくなる。だから、料理としても懐かしい、味だと思う。
たろっと(太郎生人)三国屋