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うぐいす、うずら。どちらもピヨよ。
ようかんと言ったら羊羹で、羊羹と言ったら小豆。
小雨降る2月、美杉町にある “東屋ようかん” さんを訪ねた。
緑のビニールの暖簾に赤文字で浮かぶ、ようかん。
東屋の文字は黒。
初めてなのに懐かしい感じがするのはなんだろう。
こじんまりとした店内を通り、奥の作業場を見学させていただいた。
ようかん作りは朝、かまどでお湯を沸かすところから始まる。
かまどで湯を沸し、そこでうずら豆を茹でる。
ん…?!
うずら豆?!
ようかんなのに、小豆でない!
明治から続くこちらのようかんは、、うずら豆で作られた、‘’養甘‘’だそうだ。
養甘(ようかん)て、もう一般的 “羊羹(ようかん)” と何も一致していない。
なんでうずら豆なんですか?
なんで、羊がいないのですか?
そもそも羊羹て、なんでこんな難しい漢字なんだろう。
私の頭に疑問が押し寄せる。
それを一括する、お母さんの答え。
「なぜかは分からないけれど、先代からずっと、うちはうずら豆で作っているんです」
なぜ、うずら豆なのか…。
知りたかった答えは得られなかった。
「ただ、うずら豆は◯とか✕とか、栄養が高いと言われているのみたいで。何が高いかは後で調べてもらったらいいと思うのですが…」
調べました!
〝うずら豆には、脳や神経の唯一のエネルギー源であるビタミンB1や、肌荒れ・吹き出物を抑えて肌を健康に保つビタミンB2、タンパク質と一緒に摂ると吸収率が倍増するといわれるカルシウム、筋肉の収縮を調整するマグネシウム、貧血を防ぐ鉄、整腸作用のある食物繊維などが含まれていて、亜鉛も豊富に含まれています。〟
参照:https://www.fashion96.com/pinto-bean/
「だから養甘て書くのかもしれません」
偶然か、必然なのか、この名前。
沸かしたお湯で豆を茹で、ゴリゴリして皮を剥いて。
また豆を茹でて、浮いてきた皮を流す。
これを豆が白くなるまで、何回も繰り返すんです。
いい感じの軟らかさになった豆をザルで漉して、絹ごしのザルで漉して、布巾でしぼって、火加減にもよるけれど2〜3時間焚くんです。
東屋ようかんさんは、薪で湯を沸かし、豆を炊き、練り上げていく。
火加減は難しいですよ。
木の太さも違うし、お客さん来て接客してたら焦がしちゃったりもします。
すごいですね〜と言うと、
「できますよ〜絶対。続けてれば、出来るようになります」
薪で養甘を練り上げることも、うずら豆の皮を剥くために何度も皮が浮いた湯をこぼすことも、きめ細かくするために何回もゆでた豆をザルで濾すことも私はきっと出来ないのです。
やる前から、なんだか大変そうで小豆でこしあんを作りたいと思いながら、おしるこで満足してしまう私ですもの。
だからやっぱり私は言いたいのです。
すごいです、と。
何代にも渡って作られてきた、東屋ようかん。
味は変わりましたか?という質問に、
「昔はもっと甘かったよ〜と言われることもあります。今のように寒天ではなく、天草だったからでしょうか。それか、お砂糖の量か…」
4代目のたかこさんは今から10年前くらいに、本格的に代替わりされた。
「朝は母がお湯を沸かしてくれてるんです。それから後は、私がやります。」
昔からの技を、当たり前のように受け継いで繋いでくれている人がいる。
「次はどうなることやら」
その言葉に、不思議と不安は感じられなかった。
おまけ
〜タイトルの話〜
チーム美杉のふたりと、帰りのエレベーターで一緒になった。
私:明日、東屋ようかんさんに行かせてもらうんです。
美:うぐいす豆で作ってるんだよね。
私:うずら豆、って言ってたと思ってました。
美:わかんないわかんない、違うかも。
私:明日聞いてみます。
豆はうずら豆だった。
だけど、ようかんの色は緑色。
そう、うぐいす色。
ふむふむ。
うぐいす豆とうずら豆。
どちらも豆で、鳥の名由来。
だから「ピヨよ」と言ってみた。